CP+2015 SIGMA 150-600mm Contemporary レビュー

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みなとみらい、CP+2015に行った。
私自身が、超望遠を入手したいと考えており、SIGMAの150-600mm Contemporaryが購入候補筆頭であった。
同様の人も多くいらっしゃるだろうと思うので、まずは上記のレンズについて受けた説明、触った感想を記す。
これからCP+に行く人にも、そうでない人にも、検討の一助になれば幸いである。


今回、このレンズに関して驚いたことが2つある。
まず1つは、SIGMAの技術セミナー内で設計者の方がご説明されていた内容から。

端的にいうと、150-600mm Contemporaryは同 Sportsと光学性能は同等。

試しに既に公式サイトに記載されているレンズ性能の一部を表すMTF曲線を見てみる。
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上がContemporary、下がSportsである。
見ての通り殆ど変わらない。
実際はMTFだけでなく他の光学特性においても同等であるようだ。

価格は安く、より小さいのにである。
なかなか受け入れがたいが、理由をセミナー内のお話しから簡潔に述べると、新規の技術開発が成功したためである。

この成功は推測するに、悪く言えば"たまたま"であろう。
もし発売時期をずらし、設計を練ることで同等性能になると最初からわかっているならば、正常な判断において、より高く重いSportsは作らない。

成功したのはSIGMAの持つ技術力の高さと、設計者の熱意、そしてレンズの神様のいたずらに依るのだろう。

ではこの運に恵まれた技術の結晶があるならば、誰もSportsを買わないではないかということになる。
が、Sportsにも利点がある(と設計者の方がおっしゃられていた)。

まずは防塵防滴、そして新複合材「TSC」の採用による熱特性の優位性だ。
熱特性の優位性はどういうことかというと、レンズの鏡筒は金属(通常アルミ)と樹脂で作られる。
このアルミと樹脂の熱膨張率の差によって、高温あるいは低温になるほど、レンズの位置が理想位置からずれ易くなる。

そこで、アルミに近い熱膨張率を持つ新複合材を従来の樹脂の代わりに用いることで、
熱による位置ずれを最小限に抑えることができる。

そして、Sportsの有利な点はもう1つ、信頼性である。
Sportsに使われる技術は新規のものではない。言い換えると、市場で散々試されブラッシュアップしてきた技術だ。
つまり不測の事態は起きにくい。

あらゆるメーカーは通常、仕様より厳しい条件で試験を行う。
だが、予想もしていなかった使い方や、材料の欠陥などによって、思わぬ不具合の発生はどうしても抑えられない。
新規技術の場合は特にである。

そういった点で、失敗の許されない業務用としてSportsにも分がある。

が、アマチュアが使う分には、小型で安いContemporaryで充分、いやむしろ最適だろう。


そしてもう1つ驚いたことがある。
それは展示されていたContemporaryを手にとったときのことだ。
違和感である。
重い。
とても重い。
TAMRONの150-600mmより重い。

なぜ重量に違和感なのかというと、TAMRONがカタログスペック1951gなのに対し、Contemporaryは1930gと僅かながらSIGMAの方が軽いはずだからだ。
しかし私の手の感覚は異なっていた。
わずかどころか、明らかにContemporaryの方が重いのである。

この違和感の原因について、推測と検証を行うために、何度もSIGMAブースとTAMRONブースを往復することになった。
(TAMRONブースの説明員の方、変な客が来て申し訳ない。SIGMAブースはレンズの前に誰も居なかったので存分に試せた)

結果から言うと、重い理由はSIGMAの方が、重心がレンズの先端に近いためだ。

レンズ構成は、TAMRON 13郡20枚、SIGMA 14郡20枚と枚数は同じ。
しかしTAMRONの構成(公式から引用)が下記の図なのに対し、
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SIGMAの構成は下記の赤丸で囲った所、前玉の近くに比較的大きい1枚が配置されている。
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またさらに、レンズの根本に付く三脚座の重さがSIGMA 100gに対し、TAMRON 約200g(TAMRONブースの説明員の方に教えていただいた)となっている。


これらだけでは無いと思うが、ともかく持った感じではSIGMAの方が重心が撮影者の体から離れている。
重心が離れている方が重く感じるのは直感的にわかるだろう。
(理系の言葉で言えば、モーメントが大きくなるため)
(卑近な例えだと、ボウリングの玉を腕を伸ばして持つよりも、腕を曲げて体の近くで持つほうが楽であるのに似ている)

この重量感の差は大きく、私の筋力は一般的な女性の1.2倍程度だと想定してもらいたいが、Contemporaryで手持ち撮影を行うのは私は難しいと感じた。
じっくり構えると、レンズを支える左手が震えるのである。
TAMRONの場合は、手持ちでもなんとかなる重さだった。
ただ絶対に無理かというと、三脚座を外した状態では、Contemporaryでもできなくはないというところまで軽くなる。

一般的な男性の筋力では問題ないと思われるが、ご年配の方や女性は、実際に手に持って試してから購入した方がいい。


結論としては、SIGMA 150-600mmは光学性能は間違いなく素晴らしい。
しかし実際に手に持って重量感を試す必要がある。
ということで、レビューを終わらせていただきたい。


蛇足だが、2年ほどしたら新規技術にも実績が付き、Contemporaryは防塵防滴、材料変更などの改良によってSportsに格上げされるのではないかと予測する。
その時は、少し描写性能は落ちてもTAMRONより性能が良く小型軽量を達成した新しいレンズがContemporaryになるだろうと期待する。