紗々写真展「s/elf.」レビュー

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【紗々写真展 s/elf.】開催|☆★ささのま!★☆


紗々写真展「s/elf.」レビュー。

写真展の開催場所、銀座は時折雨が降ったが、傘が必要なほどではなかった。
熱さも和らいで、8月にしては芸術を感じやすかったと思う。

個展にありがちだが、入り口が非常に分かりづらい。
1回素通りした。
個人開催できうる小さなギャラリーへの敷居が高いことが、日本であまり芸術作品の購入が盛んで無い原因の一つだろう。
そもそも平地が少ないゆえに地価が高すぎる。

EIZOガリレイ銀座はEIZOの製品が多数展示されており、また製品の使用法を解説するセミナーも行われる。
(正直銀座に構える意味がわからない。品川に営業所があるのだから、その近場であれば商談もできていいと思うのだが……。銀座はカメラの街だからか)

ガリレイに入ると紗々さんご本人が居た。
エレベーターを出ていきなり美人が眼に入るのでやや驚く。

製品展示と作品展示の間に間仕切りは無く、また作品はモニター展示もあるので
どこまでが製品ディスプレイ用画像で、どこからが写真展の作品なのか束の間迷った。

紗々さんの作品は、日本初のセルフポートレート写真展(HIROMIXとかやっていないのだろうか……?)なので、本人が写っていることで判別できる。
が、ダンボーのフィギュアを撮影した写真だけを集めたモニター展示もあり、それは帰宅してから改めて紗々さんの写真作品を調べていくうちに、個展の一部であったことがわかった。

作品としては、まず機材のSIGMA DP Quattroの画質の良さが心地良い。

驚く程の解像感と共に、ボケ味もなだからで美しい。
一頻りカメラの良さを体感したあと内容に傾注していく。

特に印象深かったのは、入り口に最も近い、草葉の奥に撮影者本人が写った作品だ。
言葉で説明するのは難しいが、テリー・ワイフェンバックの写真に似ている。
下にワンフェンバックの写真を一つ転記する。
http://blitz-gallery.com/_src/sc211/inf_press_36_image5.jpg
ピントの合っていないボケた範囲に紗々さんが居る写真をイメージして欲しい。
しかしただ似ているわけではなかった。

日本の美的感覚がそこにあった。
まずピントが若葉に合っている。
若葉というのがポイントで、新鮮さを非常に大切にする日本の価値観が根底にあるのだろう。
そして自然礼賛である。
この場合の自然礼賛は、西洋的な崇高の概念とは程遠く、親しみやすい、なにか愛玩するような感じであった。
人間は自然のなかに存在するという東洋精神がそこには表れているのではないか。

そして紗々さんにピントがあっていないというのが、また日本的写真感を高めるのに多大な貢献をしている。
人が写っているにもかかわらず、焦点は草葉というのが上記の東洋精神を引き立たせている。
さらに撮影者本人と判別できないほどにボカされているところに、謙遜や不言実行をといった日本の美徳を感じられる。
そして服装はまさにkawaii文化といったふわふわしたミニスカートのワンピースである。
光はみずみずしい日本の光だ。
アルルの光でもなく、タヒチの光でもない。日本の光である。

最後にご本人は非常に感じの良い方で、ご親切で優しく真面目な印象だった。
写真にこだわりがあり、写真家の中でも珍しいほど創意工夫して撮影しているのはお話ししてわかった。
写真の良さも相まって、久しぶりに人に会って快いと感じることができた。

アート系写真に興味ある人にはオススメの個展。
無料で、立地もいいので他の用事とも合わせやすいだろう。
8/29(土)まで開催。
是非御一考いただければ。



セルフポートレートで使用された三脚。展示有り。